スマホで始める健康管理:高齢者と家族のためのやさしいアプリ活用法
はじめに:スマートフォンの可能性とデジタルデバイド
近年、健康情報を得るための手段は多様化しており、インターネットやスマートフォンを通じて様々な情報にアクセスできるようになりました。これは大変便利である一方、デジタルデバイスの操作に不慣れな方にとっては、必要な情報へのアクセスが難しくなるという「デジタルデバイド」を生む要因ともなっています。特に高齢者の方々においては、この課題が健康維持や増進のための情報収集において顕著に現れることがあります。
しかし、スマートフォンや特定の健康アプリは、適切に活用すれば、健康管理や情報アクセスを助ける有効なツールとなり得ます。本記事では、デジタル機器に不慣れな高齢者の方でもスマートフォンや健康アプリを活用するためのポイントと、それをサポートしたいご家族や周囲の方ができる具体的な支援方法についてご紹介します。
高齢者の健康管理にスマートフォンやアプリが役立つ理由
スマートフォンは、電話やメールといった基本的な機能に加え、インターネット検索、動画視聴、様々なアプリケーション(アプリ)の利用など、多機能なデバイスです。高齢者の方にとって、以下のような点で健康管理に役立つ可能性があります。
- 身近さ: スマートフォンは比較的身近なデバイスとなりつつあり、持ち運びやすく、必要な時にすぐに情報を確認できる利便性があります。
- 多様な機能: 健康アプリを利用することで、歩数計、服薬時間のアラーム、血圧や体重の記録、簡単な健康知識の学習など、様々な健康管理をサポートする機能を利用できます。
- 視覚的な情報: 文字だけでなく、写真やイラスト、動画などで情報を得られるため、活字を読むのが億劫な場合でも理解しやすいことがあります。
- コミュニケーション: 遠隔に住む家族や友人と、健康状態を共有したり、励まし合ったりするためのコミュニケーションツールとしても活用できます。
高齢者向けの健康アプリを選ぶポイント
健康アプリは数多く存在しますが、高齢者の方が利用する場合には、以下のような点に注意して選ぶことが大切です。
- 操作のシンプルさ: ボタン配置が分かりやすいか、文字やアイコンが大きいか、複雑な操作を必要としないかなど、直感的に使えるデザインのアプリを選びましょう。
- 必要な機能に特化しているか: 多機能すぎるアプリはかえって混乱を招くことがあります。例えば、服薬管理だけ、歩数計だけ、といったように、利用したい目的に合ったシンプルな機能のアプリが適している場合があります。
- 広告表示の少なさ: ポップアップ広告などが頻繁に表示されるアプリは、誤操作の原因になったり、わずらわしさを感じさせたりすることがあります。
- 信頼できる情報源に基づいているか: 健康情報を提供するアプリの場合は、開発元が信頼できる医療機関や公的機関であるか、または情報ソースが明確であるかを確認しましょう。
- 無料か有料か: まずは無料のお試し版や基本的な機能が使える無料アプリから試してみるのが良いでしょう。
具体的なアプリの種類としては、以下のようなものが考えられます。
- 歩数計アプリ: スマートフォンを持ち歩くだけで自動的に歩数をカウントしてくれるものが多くあります。日々の活動量の目安になります。
- 服薬管理アプリ: 服薬時間になるとアラームで知らせてくれたり、飲み忘れを防ぐ記録をつけられたりします。
- 健康記録アプリ: 血圧、体重、体温などを入力し、グラフで変化を確認できるものがあります。日々の状態を把握し、医師に伝える際にも役立ちます。
- 体操・ストレッチ紹介アプリ: 自宅でできる簡単な運動方法を動画などで紹介するアプリもあります。
デジタル初心者でも始めやすいスマートフォンの基本設定
スマートフォン自体やアプリの操作に慣れるためには、まず基本的な設定を高齢者の方にとって使いやすいように調整することが推奨されます。
- 文字サイズの拡大: 画面全体の文字サイズを大きく設定することで、情報を読みやすくします。
- 表示サイズの変更: アプリのアイコンなどの表示サイズを大きくし、押し間違いを防ぎます。
- 通知設定の整理: 不要なアプリからの通知をオフにすることで、画面が煩雑になるのを防ぎ、重要な通知を見逃しにくくします。
- よく使うアプリの配置: 健康アプリなど、よく使うアプリはホーム画面の分かりやすい場所に配置しましょう。
- お気に入り登録: よく見る健康情報サイトやアプリ内の特定のページがあれば、お気に入りやブックマークに登録しておくと、次回からすぐにアクセスできます。
家族や周囲の人ができる具体的なサポート方法
デジタルに不慣れな高齢者のスマートフォンやアプリ活用をサポートする上で、家族や周囲の人の役割は非常に重要です。
- 一緒に使う: 一緒にスマートフォンを操作したり、アプリを使ってみたりすることで、高齢者の方は安心して操作を覚えることができます。最初は短い時間から始め、根気強く付き添うことが大切です。
- アプリの選定とインストール: 高齢者の方の目的やデジタルスキルに合わせて、適切なアプリを一緒に選び、インストールしてあげましょう。複数のアプリを一度に導入するのではなく、一つずつ慣れていくのがおすすめです。
- 初期設定と使い方の説明: アプリの初期設定を行い、基本的な使い方を丁寧に説明します。必要であれば、操作手順を写真付きで簡単なマニュアルとして作成するのも有効です。
- 具体的な活用シーンの提示: 「このアプリを使えば、毎日の歩数を記録できるから、どれくらい歩いたかすぐ分かるよ」「お薬の時間になったら、このアプリが音で知らせてくれるよ」など、アプリを使うことで何ができるのか、具体的なメリットを伝えると興味を持ちやすくなります。
- 定期的な見守りとサポート: 一度使い方を説明しただけで終わりにせず、時々利用状況を確認したり、「困っていることはない?」と声をかけたりするなど、継続的にサポートすることで、安心して使い続けることができます。
- 遠隔サポートの検討: 離れて暮らす家族の場合、スマートフォンの遠隔操作機能や、画面共有機能などを使えるように設定しておくと、トラブル時にすぐにサポートできる場合があります。
- 他の情報源との連携: スマートフォンやアプリからの情報だけに頼るのではなく、かかりつけ医、薬剤師、地域の相談窓口など、他の信頼できる情報源と組み合わせて活用することの重要性も伝えましょう。
まとめ:継続的な支援と活用で健康管理をサポート
スマートフォンや健康アプリは、高齢者の健康管理をサポートする有効なツールとなり得ます。操作に慣れないうちは難しさを感じるかもしれませんが、使いやすいアプリの選定、スマートフォンの基本設定の最適化、そして何よりも家族や周囲からの根気強く継続的なサポートがあれば、デジタルデバイドを乗り越え、これらのツールを活用して健康情報を得たり、日々の健康管理を行ったりすることが可能になります。
重要なのは、デジタルツールを使うこと自体が目的ではなく、あくまで健康維持や増進のための手段であるという認識を持つことです。スマートフォンの活用を通じて、健康情報へのアクセスをスムーズにし、より豊かな生活を送るための一助となれば幸いです。