高齢者の健康情報探しをサポート:信頼できるオンライン情報源の見分け方
はじめに
近年、インターネット上には様々な健康情報があふれています。スマートフォンやパソコンがあれば、いつでもどこでも最新の情報にアクセスできる時代となりました。これは大変便利なことである一方、情報が多すぎたり、その情報の信頼性を判断するのが難しかったりといった課題も生まれています。
特に、デジタル機器の利用に慣れていない方々にとって、オンラインでの健康情報へのアクセスはハードルが高い場合があります。また、ご家族など周囲の方々が、デジタルに不慣れな高齢の方のために情報収集をされる機会も増えているのではないでしょうか。本記事では、デジタルデバイドの現状を踏まえ、信頼できるオンライン健康情報を見分けるためのポイントと、ご家族など周囲の方ができる具体的なサポート方法についてご紹介します。
デジタルデバイドと健康情報アクセス
デジタルデバイドとは、情報通信技術(ICT)を利用できる人とできない人との間に生じる格差を指します。特に高齢者の間では、スマートフォンの操作に不慣れであったり、必要な情報にたどり着くための検索スキルが十分でなかったりといった理由から、デジタルデバイドが生じやすい傾向があります。
このデジタルデバイドは、健康情報へのアクセスにも影響を与えます。例えば、新型コロナウイルス感染症に関する最新情報、ワクチンの接種情報、自治体や医療機関が発信する健康に関するお知らせなどが、主にウェブサイトで提供される場合、それにアクセスできないことで必要な情報から取り残されてしまう可能性があります。正確な情報にアクセスできないことは、健康管理や病気の予防、適切な受診行動を妨げる要因となり得ます。
信頼できるオンライン健康情報源を見分けるポイント
インターネット上の情報は玉石混交です。中には医学的に根拠のない情報や、特定の目的のために歪められた情報も含まれています。健康に関する情報に基づき行動することは、ご自身の体に関わる重要な判断につながるため、その信頼性を慎重に見極めることが不可欠です。ここでは、信頼できるオンライン健康情報源を見分けるための基本的なポイントをいくつかご紹介します。
発信元を確認する
最も重要なポイントの一つは、その情報がどこから発信されているかを確認することです。信頼できる情報源としては、以下のようなものが挙げられます。
- 公的機関: 厚生労働省、国立感染症研究所、国立がん研究センターなどの国の機関や、都道府県・市区町村のウェブサイト。
- 医療機関: 大学病院や公立病院、信頼できる個人のクリニックなどの公式サイト。
- 学会・専門家団体: 日本医師会、各疾患に関する専門学会などのウェブサイト。
- 信頼できるメディア: 科学的な根拠に基づいた情報発信を方針としている大手メディアの健康関連ページなど。
ウェブサイトの運営者情報や「私たちについて」「免責事項」といったページを確認し、どのような組織や個人が情報を発信しているのかを必ず確かめましょう。個人のブログやSNSでの体験談などは参考になることもありますが、医学的な判断の根拠とするには不向きです。
情報が最新であるか確認する
医療や健康に関する情報は日々更新されることがあります。掲載されている情報がいつ作成または更新されたものか、日付を確認しましょう。特に感染症の情報や治療法など、変化の早い分野の情報においては、最新の情報に基づいているかが非常に重要です。
情報の根拠が示されているか確認する
信頼できる健康情報には、その情報の根拠となった研究結果や統計データ、参照した文献などが示されていることが多いです。医学論文へのリンクや、出典が明記されているかを確認しましょう。科学的な根拠(エビデンス)に基づかない情報は、安易に信じないように注意が必要です。
特定の製品やサービスへの誘導がないか注意する
営利目的のウェブサイトでは、特定の健康食品やサプリメント、医療サービスなどを過剰に推奨している場合があります。「必ず治る」「奇跡の効果」といった誇大な表現には特に注意が必要です。信頼できる公的機関や医療機関の情報は、通常、特定の製品の宣伝を目的としていません。
複数の情報源で確認する
一つの情報源だけを鵜呑みにせず、複数の信頼できる情報源で同じ情報が掲載されているかを確認することも有効です。異なる情報源で同様の内容が確認できれば、その情報の信頼性は高まります。
デジタルに不慣れな高齢者をサポートする方法
デジタルスキルの習得には時間がかかる場合もあります。すぐにオンラインで情報収集ができるようになるのが難しい場合でも、ご家族など周囲の方がサポートすることで、必要な健康情報にアクセスしやすくなります。
情報収集のサポート
- 一緒に探す: ご本人と一緒にパソコンやスマートフォンを使って、関心のある健康情報や、知りたいことについて一緒に検索してみましょう。「こういう風に調べると、こういう情報が出てくるよ」と具体的な操作を見せることも学習の一助となります。
- 分かりやすい情報を厳選する: インターネット上には専門的な情報も多いです。ご本人が理解しやすいように、専門用語を避けて平易な言葉で書かれた記事を選んだり、情報の要点をまとめて伝えたり工夫しましょう。
- 印刷や手書きで整理する: デジタル情報だけでなく、必要な部分を印刷したり、箇条書きにして手書きでまとめたりすることで、デジタル機器の操作が苦手な方でも情報を確認しやすくなります。
- 信頼できるウェブサイトをブックマークする: よく利用する公的機関のサイトや、かかりつけ医のサイトなど、信頼できる情報源をスマートフォンのホーム画面にショートカットとして登録したり、ブラウザのブックマークに登録したりしておくと、次回から簡単にアクセスできます。
デジタルアクセス支援
- 操作マニュアル作成: ご本人専用の、スマートフォンの基本的な使い方や、特定のアプリ(例:お薬手帳アプリ)の使い方を写真付きで説明した簡単なマニュアルを作成するのも有効です。
- 地域のIT講座・相談会活用: 自治体や社会福祉協議会、NPOなどが、高齢者向けにスマートフォンの使い方講座やIT相談会を実施している場合があります。こうした機会を活用するよう勧めてみるのも良いでしょう。
- 家族間での情報共有ツールの活用: ご家族間で、健康に関する情報や病院の予約日時などを共有できるコミュニケーションツール(例:LINEのアルバム機能で検査結果を共有、共有カレンダーアプリで通院予定を管理)を活用することも、情報伝達のミスを防ぎ、全員で状況を把握するのに役立ちます。
コミュニケーションを大切にする
一方的に情報を伝えるだけでなく、ご本人の健康に対する考えや不安、疑問などを丁寧に聞き出すことが大切です。デジタル情報だけに頼るのではなく、「この情報について、かかりつけの先生に聞いてみましょうか」「地域の保健センターに相談してみましょうか」といったように、他の相談先があることも伝え、必要に応じて専門家への相談を促しましょう。
信頼できる健康情報源の例
以下は、信頼できる健康情報を提供している代表的なオンライン情報源の例です。情報収集の参考にしてください。
- 厚生労働省ウェブサイト
- 国立がん研究センター がん情報サービス
- 国立長寿医療研究センター
- 日本医師会
- お住まいの市区町村のウェブサイト(健康診断、予防接種、地域の医療情報など)
これらのサイトも、情報がいつ更新されたものか、内容がご自身の状況に合っているかなどを確認しながら活用することが重要です。
まとめ
デジタル技術の進化により、健康情報へのアクセス方法は多様化しています。しかし、デジタルデバイドによって、必要な情報にスムーズにたどり着けない方々がいることも事実です。
信頼できるオンライン健康情報を見極める目を養うこと、そしてデジタルに不慣れな方々に対して、ご家族や周囲の方が具体的な方法でサポートすることは、デジタルデバイドを乗り越え、誰もが必要な健康情報にアクセスできる社会を実現するために非常に重要です。
ご自身の、そして大切なご家族の健康を守るために、本記事でご紹介した情報が皆様のお役に立てれば幸いです。そして、もし情報の判断に迷ったり、ご自身の体調に不安があったりする場合は、必ず医療機関や専門家にご相談ください。