電話や紙で賢く収集:デジタルデバイドを乗り越える健康情報ガイド
デジタル化が進む現代において、健康に関する情報もインターネット上で得られるものが増えています。しかし、すべての方が容易にデジタルツールを使いこなせるわけではありません。特に、デジタルデバイスの操作やインターネットの利用に慣れていない方々にとって、必要な健康情報にたどり着くことが難しい「デジタルデバイド」は、健康維持や増進における大きな課題となり得ます。
この課題に直面しているのは、情報が必要なご本人だけでなく、そのご家族や周囲の方々も同様です。大切なご家族のために役立つ情報を探したいけれども、ご本人がデジタルに不慣れな場合、どのように情報を伝え、サポートすれば良いのか悩むこともあるでしょう。
本稿では、デジタルスキルに関わらず健康情報にアクセスするための様々な方法と、ご家族など周囲の方ができる具体的なサポート方法についてご紹介します。インターネットだけが情報源ではありません。デジタル以外の手段も活用し、誰もが必要な健康情報にアクセスできる社会を目指しましょう。
デジタルスキルが不慣れな方向けの健康情報源
デジタルデバイスを使わなくても、信頼できる健康情報にアクセスする方法は複数存在します。ご自身の状況や知りたい情報に合わせて、これらの手段を組み合わせて活用することが可能です。
1. 公的な機関の相談窓口(電話・対面)
国や自治体、専門機関などが設置している電話相談窓口や、対面での相談を受け付けている窓口は、信頼性の高い情報を直接得られる貴重な情報源です。
- 保健所・保健センター: 各自治体が設置しており、健康相談や病気の予防、健康診断に関する情報提供などを行っています。電話での問い合わせや、窓口での相談が可能です。地域の健康課題に関する情報も得られます。
- 地域包括支援センター: 高齢者の暮らしを地域で支えるための拠点です。健康に関する相談はもちろん、医療機関や介護サービスなど、様々な情報を提供しています。電話や窓口、あるいはご自宅への訪問による相談も受け付けています。
- 専門の相談窓口: 特定の疾患(例:がん相談支援センター、難病情報センター)や、精神保健福祉に関する相談窓口など、病気の種類や健康の悩みに特化した専門機関が電話相談や情報提供を行っています。
電話相談は、その場で疑問点を質問できるため、不明な点を解消しやすいという利点があります。
2. 医療機関や薬局での情報提供(対面・紙媒体)
受診した医療機関や、かかりつけの薬局は、最も身近で信頼できる健康情報源の一つです。
- 医師・看護師への質問: 診察時や入院中に、ご自身の病気や治療法、日常生活での注意点などについて直接質問できます。時間を十分に取れない場合もあるかもしれませんが、事前に質問したいことをまとめておくと良いでしょう。
- 薬剤師への相談: 薬の効果や副作用、飲み合わせなどについて詳しく聞くことができます。お薬手帳を持参することで、より的確なアドバイスを得やすくなります。
- 病院や薬局のパンフレット: 待合室などに病気や治療法、検査に関する説明、生活習慣病予防などのパンフレットが置かれていることがあります。持ち帰って自宅でじっくり読むことができます。
専門家から直接説明を受けたり、書面で情報をもらったりすることで、誤解なく正確な情報を得られます。
3. 自治体の広報誌や配布物(紙媒体)
お住まいの自治体が発行する広報誌や、区報・市報などには、地域の健康診断のお知らせ、予防接種の情報、健康教室や相談会の案内など、地域に根ざした健康情報が掲載されています。これらは定期的にご自宅に配布されることが多く、デジタル機器を使わずに手に入れられる情報です。また、自治体の窓口や地域の公共施設(公民館、図書館など)にも設置されています。
4. 図書館の活用(紙媒体・対面)
地域の図書館には、医学や健康に関する書籍、雑誌などが豊富に揃っています。専門家が執筆した信頼できる情報源に触れることができます。また、司書の方に相談すれば、知りたいテーマに関する資料を探すのを手伝ってもらうことも可能です。インターネット検索とは異なり、体系的にまとめられた情報を落ち着いて得ることができます。
5. テレビやラジオの健康番組、新聞の記事(放送・紙媒体)
テレビやラジオの健康情報番組、新聞の医療・健康関連の記事も、幅広い層に向けた情報源です。ただし、これらの情報は一般的な内容であることが多いため、個々の状況に当てはめる際は、必ず専門家(医師など)に相談することが重要です。
家族や周囲の人ができる具体的なサポート方法
デジタルに不慣れなご家族が健康情報にアクセスできるよう、周囲の人がサポートできることは多岐にわたります。単に情報を「代わりに調べてあげる」だけでなく、ご本人が情報に触れ、理解し、活用できるよう寄り添う視点が大切です。
1. 一緒に非デジタル情報源を探す・活用する
- 電話相談への付き添い/同席: 相談窓口に電話する際に、一緒に番号を探したり、電話の横で聞き手として同席したりすることで、ご本人の安心につながります。必要であれば、状況を補足したり、質問を促したりすることもできます。
- 医療機関への同行: 診察や薬剤師からの説明に同行し、話の内容を一緒に聞くことで、情報の聞き漏らしや誤解を防ぐことができます。専門家の説明をご本人が理解できるよう、後でゆっくり説明し直すことも重要です。
- 自治体広報誌やパンフレットの確認: ご自宅に届いた広報誌などを一緒に見て、健康に関するお知らせがないか確認します。気になる情報があれば、読み聞かせたり、マーカーで印をつけたりして、注意を促します。
- 図書館への同行: 一緒に図書館に行き、健康に関する書籍を探す手伝いをします。活字が大きい本や、図が多い解説書などを選ぶのも良いでしょう。
2. 入手した情報を分かりやすく整理・保管する
電話や対面で得た情報、あるいはパンフレットや記事など、非デジタルの情報は散逸しやすいことがあります。
- メモを取る: 電話相談や医療者からの説明を聞く際は、重要な点をメモに取ることを習慣づけます。後で見返せるように、日付と内容を明確に記録します。
- 情報のファイリング: 医療機関でもらった説明書、薬の情報、健康診断の結果、自治体からの配布物などを一箇所にまとめて保管します。クリアファイルやバインダーを活用し、項目別に整理すると、後で必要な情報を見つけやすくなります。
- 要約と共有: 得た情報を、ご本人が理解しやすい言葉で簡潔にまとめ、一緒に確認します。難しい専門用語は避け、具体的な行動につながる形で伝えます。
3. 医療従事者とのコミュニケーションを支援する
ご本人が医師や薬剤師にうまく状況を伝えられなかったり、質問をためらったりする場合、家族が間に入ってサポートします。
- 事前の情報整理: 受診前に、体調の変化や聞きたいことを一緒に整理し、メモを作成します。
- 診察時の同席: 可能であれば診察に同席し、ご本人の状況を補足したり、質問を代弁したりします。ただし、ご本人の意思を尊重し、事前に同意を得ることが重要です。
- 説明の確認: 医療者からの説明後、ご本人が内容を理解できているか一緒に確認します。不明な点があれば、再度医療者に質問するか、自分が理解した範囲で補足説明を行います。
4. 無理強いせず、本人のペースに合わせる
デジタルツールや特定の情報源の利用を無理に勧めるのではなく、ご本人が最も安心できて、利用しやすい方法を一緒に見つけることが大切です。デジタルスキルを習得することが目的ではなく、必要な健康情報にアクセスし、理解することが目的であることを忘れないようにしましょう。ご本人の「知りたい」という気持ちを尊重し、根気強くサポートを続けます。
まとめ
デジタルデバイドは、健康情報へのアクセスを妨げる要因となり得ますが、インターネット以外にも信頼できる健康情報源は数多く存在します。公的な相談窓口、医療機関、地域の公共サービス、紙媒体の情報などを活用することで、デジタルスキルに関わらず必要な情報にたどり着くことが可能です。
そして、ご家族や周囲の方々のサポートは、デジタルに不慣れな方が安心して情報にアクセスし、活用するために非常に重要です。一緒に情報源を探したり、情報を整理したり、医療者とのコミュニケーションを支援したりすることで、その方の健康維持・増進を力強く支えることができます。
デジタル化の恩恵を受けつつ、同時にすべての方が取り残されないよう、多様な情報アクセス手段があることを理解し、それぞれの状況に応じた最適な方法を見つけていくことが、健康で安心して暮らすために不可欠です。